ファダプス®錠10mg

開発の経緯

ランバート・イートン筋無力症候群(Lambert-Eaton myasthenic syndrome:LEMS)は、神経筋接合部のシナプス前膜にあるP/Q型電位依存性カルシウムイオン (Ca2+)チャネルに対する自己抗体の産生を特徴とする自己免疫疾患です。自己抗体によりCa2+の神経への流入が阻害され、コリン作動性神経終末からシナプスへのアセチルコリンの放出が減少することで、神経筋伝達が減少すると考えられています。中核となる臨床症状として、四肢近位筋の筋力低下、自律神経障害、腱反射の低下がみられます。近位筋の筋力低下により、歩行や階段を上るなどのごく基本的な作業が困難となります。日常生活で車椅子が必要となる患者も報告されており1) 、LEMSは QOLに多大な影響を及ぼします。また、 LEMS患者の50~70%に悪性腫瘍(うち80%以上が小細胞肺がん)を合併することが報告されており2-5)、小細胞肺がんを合併するLEMSでは、合併しないLEMSに比べて生存期間が短いことが報告されています6)

LEMS治療の基本的な考え方は 1998年のNewsom-DavisのLEMS治療アルゴリズム7)、これを発展させた2011年Titulaerら8)、2014年Evoliら9)、2018年Kitanosonoら10)により提唱されたものが基本となっており、その中で、アミファンプリジン(3,4-ジアミノピリジン)は治療の第一選択として推奨されています。欧州神経学会でもLEMSの対症療法の第一選択として推奨され、2011年のCochraneレビューでは、アミファンプリジンと免疫グロブリン静注療法がエビデンスのあるLEMS治療として取り上げられています11)。本邦で 2022年に発行された「重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン2022」12)で推奨されている治療アルゴリズムでは、Kitanosonoらが提唱した治療のアルゴリズムがもとになっており、治療の第一選択は、悪性腫瘍の有無にかかわらず、アミファンプリジン(3,4-ジアミノピリジン)を使用することとされています。しかしながら、これまで本邦においてLEMS治療に保険適用となっているアミファンプリジンはありませんでした。

ファダプス®錠(以下本剤)は、アミファンプリジンリン酸塩を有効成分とする薬剤であり、電位依存性カリウムイオン(K+)チャネルを遮断することで、神経筋接合部におけるシナプス前終末の脱分極時間を延長し、シナプス間隙へのアセチルコリン放出の亢進を介して神経筋伝達を増強することにより、LEMS患者における筋力低下を改善すると考えられています。

海外においては、EUでは欧州医薬品庁(EMA)より2002年12月に希少疾病用医薬品の指定を受け、2009年12月に成人LEMS患者の対症療法薬として製造販売承認されています。米国では米食品医薬品局(FDA)より2009年11月に希少疾病用医薬品の指定を受け、2018年11月に成人LEMS患者の治療薬として製造販売承認され、その後2022年9月には6歳以上の小児LEMS患者への適応が追加されています。現在、EUの22ヵ国及び英国、米国、イスラエル、スイス、カナダで承認されています。

本邦では、ダイドーファーマ株式会社がCatalyst Pharmaceuticals社より本剤の日本における開発・販売に関する権利を取得しました。日本人LEMS患者を対象とした国内第Ⅲ相試験(LMS-005試験)において、本剤の有効性及び安全性が検討されました。本臨床試験の結果、並びに海外で実施した臨床試験(LMS-001試験、FIR-001試験、REN-002試験、HEP-001試験、QTC-002試験、LMS-002試験及びLMS-003試験)の結果を踏まえ、本邦では2024年9月に「ランバート・イートン筋無力症候群の筋力低下の改善」の効能又は効果で承認されました。なお、アミファンプリジンは2021年5月にLEMS治療に対する希少疾病用医薬品(R3薬)第515号として指定されています。

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