LEMSの診断

LEMSに特異的な反復刺激試験やP/Q 型電位依存性カルシウムチャネルに対する
病原性自己抗体の有無などで診断します。

わが国のガイドライン1)では、表1のように診断基準を定めています。(1)四肢近位筋の筋力低下、(2)腱反射低下、(3)自律神経症状の3つの症状のうち、(1)を含む2項目以上があり、3項目の反復刺激試験の異常がすべて認められる場合、もう1つは3つの症状のうち、(1)を含む2項目以上があり、反復刺激試験の異常のうち(3)を含む2項目以上を満たし、P/Q 型電位依存性カルシウムチャネル(P/Q-VGCC)抗体が陽性の場合にLEMSと診断されます。
つまり、LEMS症状があり、LEMSに特異的な反復刺激試験のすべてが証明されれば診断できますし、LEMS症状があり、反復刺激試験の一部とP/Q-VGCC抗体が証明できれば診断できます。
P/Q-VGCC抗体は必ずしもLEMSだけに検出される特異的自己抗体ではないため、LEMSの診断には反復刺激試験の異常を証明することが必須となります。
診断が遅れると、症状の広がり、機能と運動能力が失われて、自立と生活の質の低下を招きます。


  • 日本神経学会監修: 重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン2022(南江堂, 2022年5月)

表1 LEMS診断基準 2022

A. 症状

  • 四肢近位筋の筋力低下
  • 腱反射低下
  • 自律神経症状

B. 反復刺激試験の異常

  • 1発目の複合筋活動電位の振幅低下
  • 低頻度刺激 (2~5Hz) 10%以上の漸減現象
  • 高頻度刺激 (20~50Hz) あるいは 10秒間の最大随意収縮後に60%以上の漸増現象

C. 病原性自己抗体

P/Q型電位依存性カルシウムチャネル抗体

D. 判定

以下の場合, LEMSと診断する.
Aのうち(1)を含む2項目以上があり,Bの3項目がすべて認められる.
Aのうち(1)を含む2項目以上があり,Bのうち(3)を含む2項目以上を満たし,Cが陽性.

  • (注)B,Cについてはガイドライン本文を参照
  • 「日本神経学会監修:重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン 2022,p.160,2022,南江堂」より許諾を得て転載.

反復刺激試験

LEMSの反復刺激試験はMGと異なり、遠位筋を被検筋としても感度は低下しません。このため一般には固定しやすい小指外転筋などの手内在筋を被検筋として行います。
2~5Hzの低頻度刺激試験を行うと LEMS では複合筋活動電位(compound muscle action potential:CMAP)の振幅が下がります。図1はLEMS患者の尺骨神経刺激、小指外転筋記録による反復刺激試験の結果です1)。1発目に比べて2発目以降は減衰し、5発目が最小振幅(減衰率25%)で、1発目から直線的にCMAPが低下しています。この直線的な漸減パターンはLEMSに特徴的とされています。
LEMSの電気生理学的な漸増現象は高頻度刺激や10秒間の最大随意収縮後にもみられますが、高頻度刺激は強い痛みを伴うため、現在では後者が推奨されています(図2)1)

  • 日本神経学会監修: 重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン2022(南江堂, 2022年5月)

図1 LEMS症例の小指外転筋で施工した3Hzの低頻度反復刺激試験

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第1刺激におけるCMAPが直線的に10%以上減衰している.

  • 「日本神経学会監修:重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン 2022,p.161,2022,南江堂」より許諾を得て転載.

図2 LEMS症例の小指外転筋で施行した50Hzの高頻度反復刺激試験と10秒間の運動負荷試験

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50Hzの高頻度刺激では250%のCMAP増大.10秒間の運動負荷では300%のCMAP増大がみられる.

  • 「日本神経学会監修:重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン 2022,p.161,2022,南江堂」より許諾を得て転載.

LEMSの診断や治療の遅れがもたらす影響

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    症状の広がりと重症度

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    機能と運動能力の喪失

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    自立と生活の質の低下