LEMSの病因と病変

LEMS 患者は神経終末からのアセチルコリン放出が阻害されていることが多く、
神経筋伝達が障害され、筋力が低下します。

LEMS 患者の約 90%が、神経終末の活性帯に局在するP/Q 型電位依存性カルシウムチャネル(P/Q-VGCC)に対する病原性自己抗体を有します1,2)。LEMSは、シナプス前終末の活性帯からのアセチルコリン(ACh)放出障害の結果として、四肢の筋力低下や腱反射低下、自律神経症状を呈します。その病変部位を理解するのに参考となる神経筋接合部の模式図(図1A)および正常者の微細構造図(図1B)をお示しします3)
正常者の微細構造図中では、神経終末膜内側にシナプス小胞が集まり、今にもAChが放出されようとしている活性帯(Active Zone)が観察されます(図1B)。この活性帯がLEMSの病変部位であり、P/Q-VGCCsが局在していると推定される部位です。また、重症筋無力症(MG)との病態の違いとして、LEMS患者の微細構造図(図1C)をお示しします4)。MGの主たる病態機序は、補体介在性に運動終板のシナプス後膜が破壊され、ACh受容体(AChR)数が減少することであると考えられています(図1D)。これに対し、LEMS患者の微細構造図では、神経終末に補体介在性の破壊像はなく、運動終板を含め異常は認められません(図1C)。


LEMSは傍腫瘍性神経症候群としても知られています。一般的な悪性腫瘍の合併率は50~61%とされており、腫瘍の内訳としては小細胞肺癌の合併率が 42~61%と多いことが報告されています5,6)。わが国のLEMS疫学研究では、LEMS患者の46.7%が腫瘍を合併し、そのうち小細胞肺癌の頻度は 71.4%と最多でした7)

       
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  • 辻畑 光宏:【重症筋無力症-病態解明と診療の進歩】概念と歴史 神経筋接合部の微細構造 Clinical Neuroscience(0289-0585)26巻9号 Page959-961(2008.09)
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図1 LEMS患者の責任病変は?:神経筋接合部の微細構造

LEMS患者の責任病変は?:神経筋接合部の微細構造

A、B=辻畑 光宏:【重症筋無力症-病態解明と診療の進歩】概念と歴史 神経筋接合部の微細構造 Clinical Neuroscience(0289-0585)26巻9号 Page959-961(2008.09)
C、D=Yoshimura T, et al. : Brain Nerve 2011; 63: 719-727.